
事業を譲り受けた、代表が交代した、会社の名前が変わった。そのとき「雇っている外国人スタッフは、明日からもそのまま働けるのか」という問いが出てきます。
結論を先にお伝えすると、経営者や会社の名前が変わったことそれ自体で、外国人ご本人の在留資格が失効することはありません。そして、この場面で必要になるのは在留資格の変更許可申請ではなく、「届出」です。ここを取り違えると、要らない申請を準備して、本当に必要な14日以内の届出を落とす、ということが起こります。外国人ご本人と、受入企業の人事ご担当者の双方に向けて整理します。
先に要点をまとめます。
経営者が交代した日と、在留期間の満了日は、なんの関係もありません。まず見るべきは在留カードの在留期間です。
特例期間について、出入国在留管理庁は「当該処分がされる時又は在留期間の満了の日から二月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間」は従前の在留資格で在留し、従前の活動を行うことができると案内しています。ここで注意したいのは、起算点が「在留期間の満了の日」からであって、「申請した日」からではないことです。「申請したから2か月ある」という理解は正確ではありません。
出入国在留管理庁の案内には、在留期間更新許可申請等を行うと在留カード裏面の「在留期間更新等許可申請欄」に申請中であることが記載される、という説明があります。ただしそこには「オンラインによる申請の場合を除く」という括弧書きが付いています。
オンラインで更新申請をしている場合、在留カードの裏面には「申請中」の記載が入りません。カードの記載だけで就労可否を判断しないでください。
表面の在留期間が過ぎている在留カードを見て、人事の側が「期限切れだ、就労させられない」と判断してしまうと、実際には適法に就労できる方の就労を止めてしまうことになります。承継直後は在留カードを一斉に点検する場面が出てきますので、カードの記載だけで判断せず、ご本人に申請状況を確認する運用にしてください。
申請の時期や更新の必要書類そのものは、別記事で詳しく扱っています。
入管法第19条の16第2号は、契約の相手方である本邦の公私の機関について、名称もしくは所在地の変更、その消滅、当該機関との契約の終了、または新たな契約の締結があったときに、14日以内の届出を義務付けています。
出入国在留管理庁の手続案内では、この届出の要点は次のとおり整理されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続根拠 | 入管法第19条の16第2号 |
| 対象となる在留資格 | 高度専門職1号イまたはロ、高度専門職2号(イまたはロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行(所属機関との契約に基づいて活動に従事する者に限る)、技能、特定技能 |
| 届出期間 | 事由が生じた日から14日以内 |
| 届出者 | 中長期在留者本人 |
| 届出方法 | 電子届出システム/窓口持参/郵送 |
| 添付資料 | 「届出事項を証する資料の提出は必要ありません」(出入国在留管理庁の案内) |
| 手数料 | 届出そのものに手数料の定めはありません |
実務上おさえておきたい点が2つあります。
ひとつは、届出義務者がご本人であることです。会社が善意で代行しようとしても、義務の主体はご本人です。承継の場面では、会社側から「14日以内にこの届出が必要です」と案内し、電子届出システムの利用登録を含めて手続を支援するという関わり方になります。
もうひとつは、資料の提出が要らないことです。出入国在留管理庁は届出事項を証する資料の提出は必要ないと明記しています。登記事項証明書や譲渡契約書を集めてから届出しようとして14日を過ぎる、ということがないようにしてください。
ここが本記事のいちばん実務的な部分です。「事業承継」と一口に言っても、契約の相手方である法人が変わるのかどうかで結論が変わります。典型的には次の3通りに整理できます。
| 承継のかたち | 雇用契約の相手方 | 届出事由への当てはめ(典型例) | 参考様式 |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡型(株主が変わるだけで法人格は同じ) | 変わらない | 届出事由に当たらない=届出は不要 | — |
| 商号変更(同一法人が名称だけ変える) | 同じ法人 | 契約機関の名称の変更 | 1の1 |
| 事業譲渡等で別法人が雇用主になる | 変わる | 契約の終了+新たな契約の締結 | 1の7(1の4と1の5を別々に出すことも可) |
株式譲渡型がいちばん誤解されやすいところです。オーナーも代表者も入れ替わって、社内の空気は大きく変わります。それでも雇用契約の相手方である法人が同じであれば、19条の16第2号がいう届出事由は生じていません。代表者が変わったことだけを理由とする届出は、この条文には用意されていません。
反対に、事業譲渡や会社分割で別法人が雇用主になる場合は、ご本人からみれば「前の会社との契約が終わり、新しい会社と契約した」ことになります。転職と同じ構造です。出入国在留管理庁の案内では、契約終了と新たな契約締結を同時に届け出る場合は参考様式1の7が便利だとされています。

上の表は典型的にはこう整理できるというものです。実際の当てはめは、承継のスキーム(株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割)と、雇用契約をどう承継させたかの組み合わせで決まります。合併や会社分割では雇用契約の扱いが個別の取り決めに左右されますし、同じ「事業譲渡」でも従業員の処遇の設計は案件ごとに違います。
さらに、雇用主が変わる場合には、届出だけで終わらない論点が出てきます。新しい雇用主のもとでの業務内容が、いまの在留資格で認められている活動の範囲に収まっているかという問題です。ここは届出とは別の話で、収まっていなければ在留資格変更許可申請を検討することになります。自社がどれに当たるかは、契約書と登記の実物を見て判断する必要があります。
入管法第19条の16の届出は、在留資格によって第1号(所属(活動)機関に関する届出)と第2号(所属(契約)機関に関する届出)に分かれています。同じ「所属機関の届出」という名前で呼ばれるため、混同しやすいところです。
| 比較項目 | 第1号(活動機関) | 第2号(契約機関) |
|---|---|---|
| 主な在留資格 | 教授、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修など | 研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行(契約に基づく場合)、技能、特定技能など |
| 届出事由の書き方 | 機関の名称・所在地の変更、消滅、当該機関からの離脱・移籍 | 機関の名称・所在地の変更、消滅、当該機関との契約の終了・新たな契約の締結 |
| 参考様式(契約・所属関係) | 1の2/1の3/1の6 | 1の4/1の5/1の7 |
| 名称変更・所在地変更・消滅の様式 | 1の1(共通) | 1の1(共通) |
承継の場面で紛らわしいのは、社長ご自身が外国人で「経営・管理」の在留資格をお持ちのケースです。この場合は第1号側の話になり、従業員(技術・人文知識・国際業務や特定技能など)は第2号側の話になります。同じ会社で、立場によって使う条項も様式も違うということが起こります。
なお、様式番号は差し替えられることがあります。実際に提出するときは出入国在留管理庁の該当ページで最新の様式を確認してください(本記事末尾に出典を掲載しています)。
ここまでは外国人ご本人の義務です。会社側にも、入管法第19条の17に「中長期在留者の受入れに関する届出」という制度があります。ただし、多くの一般企業はこの届出の対象から外れます。
出入国在留管理庁の案内には、対象となる機関について「労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出が義務付けられている機関は除きます」と明記されています。つまり、ハローワークへの外国人雇用状況届出を行っている事業所は、入管法19条の17の届出は不要という整理です。雇用保険の適用事業所であれば、通常はこちらに該当します。
あわせて、19条の17の対象となる在留資格の列挙に、特定技能、技能実習、芸術、宗教、報道は含まれていません。特定技能の受入企業には別の枠組みの届出義務がありますので、そちらと混同しないようにしてください。
出入国在留管理庁は19条の17について、「届出を行わなかったとしても、刑罰を科せられることはありませんが、所属している外国人の方々の在留期間更新等の許可申請時に事実関係の確認を行うなど審査を慎重に行うことがあります」と案内しています。刑罰の定めはないという説明と、更新審査で慎重に見られることがあるという説明は、セットで理解しておくのが実務的です。
一方、ご本人側の19条の16の届出は、これとは別の義務です。「会社が届出をしなくても罰がないから、本人の届出も後回しでよい」ということにはなりません。

承継後の業務内容がいまの在留資格で認められる範囲に収まっているか、社内で判断しきれないことがあります。そのときの選択肢が就労資格証明書です(入管法第19条の2)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置づけ | 自らの在留資格で行うことができる活動を証明する文書の交付申請 |
| 手数料 | 許可されるとき2,000円(オンライン申請の場合は1,600円) |
| 標準処理期間 | 当日(勤務先を変えた場合などは1か月〜3か月) |
| 不服申立方法 | なし |
| 勤務先が変わった場合 | 新たな勤務先や活動内容の詳細がわかる書類の提出・提示が必要 |
なお、この手数料は2026年10月1日の在留許可手数料の改定の対象には含まれていません。
取得は任意です。就労資格証明書がなければ雇用できない、というものではありません。入管法第19条の2第2項は、行うことができる活動が明らかな場合に、外国人がこの文書を提示または提出しないことを理由として不利益な取扱いをしてはならない、と定めています。条文には「明らかな場合に」という限定が付いていますので、「提示を求めること自体が違法」と読むのは正確ではありません。任意の確認手段のひとつとして位置づけるのが実務に合います。
なお、事業譲渡等で雇用主が変わり、業務内容も変わるという案件では、標準処理期間が当日ではなく1か月〜3か月になります。承継のスケジュールに合わせて早めに動く必要があります。
承継の実行日が決まったら、次の順で確認すると漏れが出にくくなります。
不法就労のリスク管理や在留カードの見方といった、外国人雇用の基本については別記事で扱っています。
法人格が同じで、雇用契約の相手方が変わっていなければ、入管法19条の16第2号がいう届出事由は典型的には生じていません。代表者の交代それ自体を届け出る規定は同条にはありません。ただし、代表者交代とあわせて商号変更や事業の移管が行われている場合は別途の検討が必要です。
期限を過ぎていても、届出をしないままにするより速やかに提出するほうがよいと考えられます。届出の状況は、その後の在留期間更新許可申請の審査で確認されることがあります。事情によっては個別の判断が必要になりますので、当事務所にご相談ください。
19条の16の届出義務者は中長期在留者ご本人です。会社が義務を引き受ける仕組みにはなっていません。実務では、会社が必要性を案内し、電子届出システムの利用登録や記載内容の確認を支援するかたちが現実的です。
雇用主が変わること自体は、契約の終了と新たな契約の締結の届出で対応します。ただし、新しい雇用主のもとでの業務内容がいまの在留資格の活動の範囲に収まらない場合は、在留資格変更許可申請の検討が必要になります。範囲に収まるかどうかの判断が難しい場合は、就労資格証明書の交付申請という選択肢もあります。
在留許可手数料は2026年10月1日から改定されました。申請の受付日によって適用される額が変わりますので、別記事をご確認ください。
契約機関に関する届出は、在留カードの記載を書き換える手続ではありません。在留カードの記載事項の変更届出(氏名・生年月日・性別・国籍の変更)とは別の手続です。
届出は許可・不許可を判断する手続ではないため、審査期間という考え方をとりません。在留期間更新許可申請の標準処理期間は2週間〜1か月とされています。実際の処理期間の傾向は別記事で扱っています。
当事務所では、最新の制度動向を踏まえた上で、外国人ご本人・受入企業様の双方からのご相談を承っています。
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ご自身で出入国在留管理局へ在留資格の申請をされる方へ。提出の前に、申請書と添付書類を確かめ、足りない書類や気をつける点をお伝えします。オンライン(Google Meet・20分程度)でも、LINE でもお受けします。
・対象:在留資格の認定・変更・更新の申請です(永住は、宮崎県内にお住まいの方に限ります)。帰化は対象外です。
・オンライン(Google Meet)は、1つの申請につき1回です。LINE でのお返事は、同じ申請について、提出の前までお受けします。
・LINE のお返事の目安は、原則2営業日以内です(土日・祝日はお休みです。混み合うときは、お返事が延びることがあります)。
・書類の写しは、LINE かメールでお送りください。在留カードは表面だけを、マイナンバーの面は送らないでください。
・お伝えするのは当事務所の意見です。許可を保証するものではなく、結果は出入国在留管理局の判断によります。
・お伝えするのは、足りない書類や気をつける点までです。申請書の作成や書き直しの代行、文案の作成はしません。許可の見込み(通るかどうか)もお伝えしません(当事務所にご依頼いただく場合は、セルフ準備コース・ライトプラン・スタンダードプランをご案内します)。
・事実と異なる内容の書類だと分かったとき、またはご本人(ご家族を含みます)の申請でないと分かったときは、チェックをお断りします。
本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市