
2026年9月9日、特定技能制度と育成就労制度の「分野別運用方針」を改正するための作業が始まりました。
同日の有識者会議で示された案では、板ガラス加工やガラス溶融成形といった新しい業務区分、手袋製造・航空機部品組立て・エクステリア施工などの「主たる技能」の追加、そして航空分野を育成就労の対象に加えることが検討されています。決定は2026年12月の閣議決定が予定されています。受入企業の人事ご担当者と、外国人ご本人の双方に向けて整理します。
先に要点をまとめます。
この有識者会議は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)および育成就労法に基づき、両制度の基本方針および分野別運用方針の案について有識者の意見を聴くために、「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」のもとに設置されているものです。その下に、技能評価の方針や試験の適正性を検討する専門家会議が置かれています。
第14回の議事は次の4件でした。
| # | 議題 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 1 | 分野別運用方針に係る閣議決定について | 報告 |
| 2 | 令和7年度有識者会議のフォローアップについて | 報告 |
| 3 | 分野別運用方針の改正に向けた作業開始について | 検討の開始 |
| 4 | 特定技能「外食業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置について | 報告 |
このうち今回の実務に効いてくるのが3番です。4番の外食業の一時停止措置については、当事務所で別途詳しく整理していますので、そちらをご覧ください。
ここが今回いちばん誤解されやすいところです。用語を整理します。
📦 2026年7月にお伝えした話
リネンサプライ・物流倉庫・資源循環という分野そのものを増やす話でした。外枠が増えます。
🧩 今回の話
分野は19のまま、その内側の区切り(業務区分・主たる技能・産業分類)を増やす案です。
つまり今回の案は、分野という外枠は動かさずに、その内側の区切りを細かくするという性格のものです。2026年7月にお伝えしたリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の追加は「外枠そのものを増やす」話でしたので、性格が異なります。
なお、自動車運送業分野には育成就労産業分野の設定がありません。業務に従事するにあたって日本の法令に基づく普通自動車運転免許等の取得が前提になるためです。
資料に示された14項目を、そのまま整理します。有効求人倍率はいずれも令和7年度の数値で、資料に併記されているものです。
| 分野 | 追加が検討されている内容 | 種別 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 工業製品製造業 | 板ガラス加工 | 業務区分の追加 | 4.34 |
| 工業製品製造業 | ガラス溶融成形 | 業務区分の追加 | 4.90 |
| 工業製品製造業 | 機械金属加工に「航空機部品組立て」 | 業務・主たる技能の追加 | 2.90 |
| 工業製品製造業 | 機械金属加工・電気電子機器組立てに「真空成形」 | 業務・主たる技能の追加 | 2.90 |
| 工業製品製造業 | 紙器・段ボール箱製造に「貼合工程(上流工程)」「貼合工程(下流工程)」 | 業務・主たる技能の追加 | 5.13 |
| 工業製品製造業 | 縫製に「手袋製造」 | 業務・主たる技能の追加 | 3.02 |
| 工業製品製造業 | 機械金属加工・電気電子機器組立てにフィルム加工5種(ドライラミネート/押出ラミネート/スリット/製袋/フラットヤーン) | 主たる技能の追加 | 2.90 |
| 工業製品製造業 | 金属表面処理に「バフ研磨」 | 主たる技能の追加 | 2.90 |
| 工業製品製造業 | 陶磁器製品製造に「タイル製造」「衛生陶器製造」 | 主たる技能の追加 | 4.95 |
| 建設 | 建築に「エクステリア施工」「ブロック建築」 | 主たる技能の追加 | 6.41 |
| 航空 | 航空分野を育成就労産業分野として設定し、空港グランドハンドリングの業務区分を設定 | 育成就労産業分野の設定 | 3.61 |
| 漁業 | 水産物産地卸売市場業 | 業務区分の追加 | 1.91 |
| 飲食料品製造業 | 飲食料品製造業に「豆腐製造」 | 主たる技能の追加 | 2.79 |
| 飲食料品製造業 | 産業分類に塩製造業(食塩製造業に限る。)を追加。共管省庁として財務省を追加 | 産業分類・所管省庁の追加 | 4.32 |
この結果、業務区分の数は工業製品製造業が17→19、漁業が2→3になる案です。
有効求人倍率でみると、建築(エクステリア施工・ブロック建築)の6.41がもっとも高く、水産物産地卸売市場業の1.91がもっとも低くなっています。人手不足の深刻さは業務区分ごとにかなり差があり、追加の理由づけもそれぞれ個別に検討されているとみられます。

「対象が広がる=受け入れられる人数が増える」と読みたくなるところですが、今回の案はそうなっていません。
| 区分 | 受入れ見込数(案) | 前回からの増減 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 805,400人 | −300 |
| 育成就労 | 426,500人 | +300 |
| 19分野の合計 | 1,231,900人 | ±0 |
増減が生じているのは航空分野だけです。航空分野の特定技能1号を4,600人(−300)、育成就労を300人(+300)とし、分野全体では4,900人で変わりません。航空分野を育成就労の対象に加えるにあたって、既存の枠の中から振り替える設計になっています。
対象の業務が広がっても、受け入れられる総数の上限が広がるわけではありません。枠と対象は別々に管理されています。
受入れ見込数は「大きな経済状況の変化が生じない限り、特定技能1号の受入れの上限として運用する」ものとされています。外食業分野で在留資格認定証明書の交付が止まったのは、まさにこの上限に達したためです。枠の残りは分野ごとに大きく違いますので、採用計画は分野を確認してから立ててください。
業務区分や主たる技能が増えると、それに対応する試験が要ります。資料には令和8年度に新規追加する技能評価試験の整備予定が示されており、「新規に作成するもの」と「既存試験の範囲を変更するもの」の2種類に分かれています。
なお、タイル製造と豆腐製造は、2026年(令和8年)7月29日に技能実習移行対象職種へ追加済みであることが注記されています。すでに技能実習の側で評価の枠組みが整っている業務ほど、育成就労への接続が進めやすいという事情がうかがえます。

資料の工程図から、時系列を整理します。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年(令和8年)1月23日 | 現行の分野別運用方針を決定(関係閣僚会議・閣議決定) |
| 2026年4月15日 | 監理支援機関の許可について施行日前申請の受付開始 |
| 2026年夏頃 | 有識者会議(今回の第14回がこれにあたります) |
| 2026年9月1日 | 育成就労計画の認定について施行日前申請の受付開始 |
| 2026年11月 | 有識者会議で分野別運用方針案を継続的に議論、専門家会議から検討結果報告 |
| 2026年12月 | 分野別運用方針の決定(関係閣僚会議・閣議決定) |
| 2027年(令和9年)4月1日 | 育成就労法令の施行 |
⚠️ 案がそのまま12月に決まるとは限りません。
資料には、有識者会議や専門家会議での議論の過程で、一定の専門性・技能を要する業務であることの確認(技能水準の設定、試験の作成等)を行うものの、その整理ができない分野等については継続検討となり、対象分野等の追加が令和9年度以降に先送りとなることがあると明記されています。
また、令和9年度以降も、分野別運用方針の変更が必要な場合や、さらなる受入れ対象分野の追加希望があれば検討するとされています。この見直しは毎年度回っていく仕組みだと理解しておくのが実務的です。
いまの段階は「案」ですので、採用の意思決定を前倒しする局面ではありません。一方で、準備には時間がかかるため、次の3点は今から進められます。
現時点では確定していません。分野別運用方針の決定が2026年12月に予定されており、その後に試験の作成・実施が続きます。受入れの開始時期は、方針の決定と試験の整備の両方が整ってからになります。
今回の案では特定産業分野は19分野のままです。増えるのは育成就労産業分野(17→18)と、各分野の中の業務区分・主たる技能・産業分類です。
案では、航空分野の特定技能1号の受入れ見込数が4,600人(−300)、育成就労が300人(+300)とされています。分野全体では4,900人で変わりません。
主たる技能は育成就労制度の概念ですが、多くの項目は業務区分そのものの追加や、特定技能評価試験の範囲変更とセットで検討されています。両制度は接続して設計されていますので、片方だけを見ないでください。
在留資格ごとに認められる活動の範囲が決まっていますので、いまの在留資格で認められている範囲かどうかの確認が先になります。判断に迷う場合は、就労資格証明書の交付申請という確認手段があります。
方針の決定と、試験の実施・受入れの開始は別です。試験が実施されていない業務区分では、技能水準を満たす証明ができません。 決定後の告示や試験の実施情報を確認してから動くことになります。
今回の案には外食業の受入れ見込数の変更は含まれていません。外食業の受入れ再開時期は未定とされ、受入れ見込数の再設定は令和10年度末が予定されています。
「【育成就労 第1回】2027年4月1日までに何が起きる? 受入企業が今すぐ確認する3点」を当事務所の行政書士が解説した動画(9分49秒)です。制度の施行前に収録しているため、今後の政省令・告示で内容が変わる可能性があります。
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本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市