
2026年、外国人の永住許可をめぐって「厳格化」が具体化しました。出入国在留管理庁は2026年8月4日、「永住許可に関するガイドライン」の改定案を正式に公示し(e-Gov 案件番号315000140)、意見募集は2026年9月4日に終了しました。改定案では、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る年収に加えて、その年収水準で厚生年金に30年加入していた場合の年金受給見込額を原則求めるほか、日本語能力(CEFR B1相当)・学齢期の子の就学・配偶者の在留期間特例の伸長などが新たに盛り込まれています。ただし、これはまだ「案」であり、確定した要件ではありません(結果は公示待ち)。この記事では、①公示された厚生年金「30年水準」を含む改定案、②すでに公表されている2027年(令和9年)4月からの要件変更、③令和6年改正入管法による永住取消しの強化を切り分けたうえで、現行の永住許可の要件を出入国在留管理庁の一次情報にもとづいて行政書士が整理します。永住を目指す外国人ご本人にも、外国人材を雇用する企業の人事ご担当者にも役立つ内容です。
永住許可の基本的な要件そのものについては「永住許可の要件を行政書士が解説」で、令和6年改正で強化された取消し制度については「永住許可の取消し制度をわかりやすく解説」で、それぞれ詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
永住許可は、在留期間の更新が不要になり、就労活動にも制限がなくなる、外国人にとって最も安定した在留資格です。それだけに審査は慎重で、近年は要件をより厳格にする方向の動きが続いています。2026年時点で押さえておきたい動きは、大きく次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 区分 | 内容 | 状態(2026年9月時点) |
|---|---|---|
| ① 厚生年金「30年水準」 | 収入・年金の見込み額を原則要件とする改定案 | 📋 2026年8月4日 公示の「案」・意見募集終了(結果待ち) |
| ② 最長の在留期間 | 就労資格などで「最長の在留期間」を求める変更 | ✅ 公表済み・2027年4月1日から |
| ③ 永住の取消し | 故意の公租公課不納などを取消し事由に追加 | ✅ 令和6年改正・施行済み |
大切なのは、「案(これから決まるかもしれないもの)」と「すでに決まったもの」を混同しないことです。ニュースの見出しだけを見ると、すべてが今日から適用されるように感じてしまいがちですが、実際には状態が異なります。以下、順番に見ていきます。
この記事の姿勢:不確かな「案」を確定情報のように書くことはしません。案は案として、確定は確定として、出典とともに区別してお伝えします。
まず、改定案の中身です。2026年7月の報道が先行しましたが、その後出入国在留管理庁が2026年8月4日に改定案を正式に公示し、内容が確認できるようになりました。以下は公示された改定案(一次情報)にもとづく整理です。意見募集は2026年9月4日に終了し、結果の公示を待つ段階のため、まだ確定した制度ではありません。
改定案は、入管法が定める永住許可の要件のうち、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)」と「日本国の利益に合すると認められること(国益要件)」の2点を中心に、審査で考慮する要素をより具体化・厳格化するものです。あわせて、在留資格「永住者」は「活動・期間の制限が無く、生涯を本邦で過ごすことが想定される最も安定した法的地位」であるとして、特に慎重な審査を行う必要があることが初めて明記されました。改定案の要点は次のとおりです。
📋 公示された改定案の要点(※意見募集終了・結果待ち)
「厚生年金30年」という数字が一人歩きしがちですが、これは「30年加入していなければ永住できない」という意味ではなく、改定案の表現では「その年収水準で30年間厚生年金に加入していた水準」に受給見込額が達しているかを見るものです。しかも不足する分は、補填できる金融資産も考慮されるとされています。細かな計算方法や運用は、確定した基準が公表されて初めて明らかになります。
⚠️ 繰り返しになりますが、この改定案はまだ確定していません。 意見募集は2026年9月4日に終了しましたが、結果は公示前であり、内容や時期は今後変わる可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁が公表する正式な情報を確認するようにしてください。不安を感じられた方も、まずは「案の段階である」ことを落ち着いて受け止めていただければと思います。
次に、上記の改定案とは別に、すでに公表され適用日が決まっている変更です。出入国在留管理庁は、永住許可に関するガイドラインについて、令和9年(2027年)4月1日をもって、次の取扱いを改めるとしています。
つまり、就労資格などで永住を申請する場合、現に持っている在留資格について施行規則で定められた最長の在留期間(多くは「5年」)で在留していることが、より明確に求められるようになります。
ただし、急な変更で不利益が生じないよう、経過措置が設けられています。
🗓️ 経過措置(公表済み)
令和9年3月31日時点で在留期間「3年」を有する方からの永住許可申請については、その在留期間内に処分を受ける場合、初回に限り、「最長の在留期間」をもって在留しているものとして取り扱うとされています。
📎 この「最長の在留期間」の変更は、②として整理したとおり公表済みの変更です。①の厚生年金「30年水準」の改定案とは別のものですが、どちらも2027年4月ごろが節目として語られるため、混同しないよう注意が必要です。
「案」や「これから変わる部分」を正しく理解するには、まず現行の要件を押さえることが近道です。ここからは、出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」にもとづいて、現在の要件を整理します。永住許可の要件は、大きく3つの柱に分かれます。
| 要件の柱 | 内容の概要 |
|---|---|
| 🧭 素行が善良であること | 法律を守り、社会的に非難されない生活を送っていること |
| 💼 独立の生計を営めること | 公共の負担にならず、資産や技能から将来にわたり安定した生活が見込まれること |
| 🇯🇵 国益に合致すること | 原則10年以上の在留、公的義務の適正な履行、最長の在留期間での在留 など |
とくに③の「国益に合致すること」は、複数の条件で構成されています。現行ガイドラインの主な内容は次のとおりです。
なかでも公的義務の履行は、近年とくに重視されています。現行ガイドラインでも、税や社会保険料について、「申請時点で納付済みであっても、当初の納付期限内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価する」とされています。「あとでまとめて払ったから大丈夫」とは限らない、という点は覚えておきたいところです。
💡 なぜ①の「案」が注目されるのか:現行でも「独立生計」「公的義務」は要件になっています。公示された改定案は、この部分の求める水準を数値でより明確化・引き上げ、さらに日本語能力や子の就学といった新しい考慮要素を加えるものと位置づけると理解しやすくなります。

3つ目の動きが、令和6年改正入管法による永住取消し制度の強化です。これはすでに施行されている制度で、永住許可を取得した後の生活にも関わります。詳しくは「永住許可の取消し制度をわかりやすく解説」でも扱っていますが、要点だけ整理します。
改正により、永住者について次のような場合が取消し事由に追加されました(入管法第22条の4関係)。
一方で、出入国在留管理庁のQ&Aでは、在留カードの携帯をうっかり忘れた場合や、更新申請を失念した場合などは、取消しの対象として想定していないと説明されています。また、取消しの手続きでは意見を述べる機会(意見聴取)が設けられ、処分に不服がある場合は取消訴訟で争うことも可能とされています。
✅ ここでの実務的な結論:①の「案」も、③の「取消し」も、いずれも「公的義務をきちんと果たしているか」を重視する方向で一致しています。永住を目指す方も、すでに永住をお持ちの方も、税・年金・保険料を期限内に納めるという基本の積み重ねが、これまで以上に大切になっています。
では、永住を目指す外国人ご本人は、何を意識すればよいのでしょうか。「案」に振り回されて焦る必要はありませんが、現行要件の基本を固めておくことは、どのような改定があっても有利に働きます。
📌 とくに、②の「最長の在留期間」の変更や、①の「案」に備える意味でも、在留期間の更新時に、より長い在留期間の付与を目指すことは重要です。ふだんから公的義務を丁寧に履行しておくことが、結果的にどの要件変更にも対応できる備えになります。
年金や収入の要件は、社会保険や税の専門的な論点にも関わります。個別の年金額の試算や納付の相談は、年金事務所や社会保険労務士などの専門家の領域になりますが、「その状況が永住審査でどう評価されるか」という点は、在留資格を専門とする行政書士がご一緒に整理できます。

外国人材を雇用する企業にとっても、永住をめぐる厳格化の動きは無関係ではありません。永住は本人が申請するものですが、社員が安定して長く働き続けられるかは、企業の人材戦略に直結します。
💡 人事ご担当者へ:永住は「本人の問題」と捉えられがちですが、適正な給与・社会保険・在留管理という企業側の基本が、結果的に外国人材の定着とキャリアを支えます。制度動向の共有も、離職防止の一助になります。
Q1. 厚生年金に30年加入していないと、もう永住できないのですか?
A. いいえ。まず、「厚生年金30年水準」は2026年8月4日に公示された改定案の内容で、まだ確定していません(意見募集は9月4日に終了・結果待ち)。また、その趣旨も「30年の加入がそのまま合否を決める条件」というより、年金の受給見込額が、その年収水準で30年間加入していた場合の水準に達しているかを見るものです。不足する場合は補填できる金融資産も考慮されるとされています。確定した基準ではないため、結果の公示を待って判断する必要があります。
Q2. 改定案は、いつから適用されるのですか?
A. 改定案では、2027年(令和9年)4月1日以降の申請から適用するとされています。ただし収入と公共の負担とならないことの2項目だけは、改定日から6か月前の日以降にされた申請であって、かつ改定日の時点でまだ審査中の案件にも適用されます(概要では収入に関する要素を2026年10月施行としています)。すでに許可を受けた案件にさかのぼるものではありません。確定した施行日ではないため、最新の情報は出入国在留管理庁の公表でご確認ください。
Q3. 2027年4月から変わる「最長の在留期間」とは何ですか?
A. これは①の改定案とは別の、すでに公表されている変更です。従来は在留期間「3年」を「最長の在留期間」とみなす取扱いがありましたが、令和9年4月1日以降は、各在留資格に定められた最長の在留期間(多くは5年)で在留していることが求められます。令和9年3月31日時点で「3年」を有する方には、初回に限る経過措置が設けられています。
Q4. 過去に税や年金の支払いが遅れたことがあります。永住は難しいですか?
A. 現行ガイドラインでは、公的義務は「申請時点で納付済みでも、当初の期限内に履行されていない場合は原則として消極的に評価する」とされています。ただし、これは一律に不許可となる意味ではなく、個別の事情が考慮されます。遅れの経緯や現在の状況によって評価は異なりますので、心配な場合は申請前に行政書士へご相談ください。
Q5. すでに永住者ですが、案が決まると永住が取り消されるのですか?
A. 公示された改定案は、これから永住を申請する人の許可基準に関するものです。すでに永住許可をお持ちの方の許可が、この改定案によって直ちに取り消されるという内容ではありません。ただし、③で述べたとおり、故意の公租公課不納などは令和6年改正で取消し事由に加わっていますので、税・年金・保険料の適正な納付は引き続き大切です。
Q6. 今できる一番の備えは何ですか?
A. どのような改定があっても共通して効くのは、税・社会保険料・年金を期限内に納め、在留期間の更新や各種届出を丁寧に行うことです。要件を数値で明確化する方向の動きが続いているため、日々の公的義務の履行を積み重ねることが、最も確実な備えになります。
2026年の永住許可をめぐる動きは、「厳格化」という言葉でひとくくりにされがちですが、中身は状態の異なる3つに分かれます。
いずれの動きにも共通しているのは、収入と公的義務(税・年金・保険料)を重視する方向です。だからこそ、案の行方に一喜一憂するよりも、現行要件の基本を日々着実に固めておくことが、最も有効な備えになります。
永住許可の申請は、在留歴の数え方、公的義務の履歴の整理、必要書類の準備など、個別の事情に応じた検討が欠かせません。制度が動く局面だからこそ、判断に迷われたときは、在留資格を専門とする行政書士にご相談ください。
🧭 宮崎で永住申請を進める方へ=要件・必要書類・福岡出入国在留管理局 宮崎出張所への申請の流れを1ページにまとめた「宮崎で永住申請」もあわせてご覧ください。
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・お伝えするのは当事務所の意見です。許可を保証するものではなく、結果は出入国在留管理局の判断によります。
・お伝えするのは、足りない書類や気をつける点までです。申請書の作成や書き直しの代行、文案の作成はしません。許可の見込み(通るかどうか)もお伝えしません(当事務所にご依頼いただく場合は、セルフ準備コース・ライトプラン・スタンダードプランをご案内します)。
・事実と異なる内容の書類だと分かったとき、またはご本人(ご家族を含みます)の申請でないと分かったときは、チェックをお断りします。
本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があり、本文で紹介した改定案は確定したものではありません。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市