
出入国在留管理庁は2026年(令和8年)8月31日、「不法滞在者ゼロプラン〜強力推進パッケージ〜」の解説資料を掲載しました。パッケージ本体は2026年5月22日に公表されていましたが、今回の解説によって、各施策の根拠となる数字と具体的な中身が読めるようになりました。
本記事では、外国人ご本人と企業の人事ご担当者の双方にとって、実務上どこが効いてくるのかを一次情報から整理します。適法に在留している方・適正に雇用している企業にとっても、無関係な話ではありません。とくに企業側にとっては、2027年4月1日からの不法就労助長罪の厳罰化が最重要のポイントになります。
政策全体の枠組みについては「第二次出入国在留管理基本計画|7年ぶり改定の要点」で扱っています。本記事は、その中の不法滞在者対策に絞った各論です。
まず、今回の公表物の位置づけを整理します。名称が似ていて混同しやすいので、時系列で押さえてください。
| 時期 | 公表・決定されたもの |
|---|---|
| 2025年5月23日 | 「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」公表 |
| 2025年11月 | 内閣総理大臣から法務大臣に対し「ゼロプランの強力な推進」の指示 |
| 2026年1月23日 | 「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」決定 |
| 2026年5月22日 | 「不法滞在者ゼロプラン〜強力推進パッケージ〜」公表 |
| 2026年8月31日 | 上記パッケージの「解説」を掲載(本記事のテーマ) |
解説資料は、法務省がパッケージ策定までの経緯を記し、各項目について補足的に説明を付す形で取りまとめたものです。資料の日付は2026年8月とされています。
つまり、今回の掲載で法律や制度が新しく変わったわけではありません。すでに公表されていた施策について、根拠となる数字と運用の方向性が明らかになった、という位置づけです。ただし後述のとおり、そこには企業実務に直結する記述が含まれています。
解説資料の出発点は、不法残留者数の増減要因の分析です。2026年1月1日現在の不法残留者数は約6万8千人とされています。
ここが実務上いちばん示唆的な数字です。2025年中に退去強制手続又は出国命令手続を執られるに至った経緯別の内訳は、次のとおりとされています。
| きっかけ | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 出頭申告(本人が自ら出頭) | 約1万1千人 | 62.8% |
| 警察等関係機関からの身柄引取等 | 約4,800人 | 28.1% |
| 入管単独又は警察等との合同の摘発 | 約1,500人 | 9.1% |
手続に至るきっかけの6割以上は「本人の出頭申告」で、摘発によるものは約1割にとどまります。今回のパッケージで「摘発の強化」が新規施策として加えられたのは、この構造を動かそうという趣旨だと読めます。
パッケージは、ゼロプランと同じく「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の三段階に分けて、8つの対応策を掲げています。それぞれが「不法残留者を増やさない施策」「減らす施策」のどちらに対応するかも整理されています。
| 段階 | 施策 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 入国管理 | (1) 電子渡航認証制度(JESTA)の早期導入 | 増やさない |
| 入国管理 | (2) 退去強制が確定した外国人が多い国に対する働き掛け | 増やさない/減らす |
| 在留管理・難民審査 | (3) 難民認定申請の審査の迅速化 | 増やさない/減らす |
| 在留管理・難民審査 | (4) 出入国在留管理のDX | 増やさない/減らす |
| 出国・送還 | (5) 護送官付き国費送還の促進 | 減らす |
| 出国・送還 | (6) 改正入管法の新制度を活用した自発的な帰国の促進 | 減らす |
| 出国・送還 | (7) 被仮放免者の不法就労防止 | 減らす |
| 出国・送還 | (8) 摘発の強化【新規】 | 減らす |

主な内容として、解説資料には次のような記述があります。
(8)「摘発の強化」は、2025年5月のゼロプランには無く、今回のパッケージで重点的に取り組むべき新規施策として新たに加えられたものです。解説資料では次の3点が挙げられています。
また、(7)「被仮放免者の不法就労防止」では、外国人雇用状況届出制度の適正化を図るための取組を強化している都道府県労働局等とも連携し、入管法違反が疑われる雇用主等を認知した場合には積極的に摘発等を実施していくとされています。
企業側から見ると、「入管が単独で見に来る」だけでなく、労働局・地方公共団体・警察との連携や、インターネット上の情報からの端緒という経路が想定されているという点が、実務上のポイントになります。
企業の人事ご担当者にとって、今回いちばん重要なのはここです。解説資料の脚注に、不法就労助長罪の法定刑の引上げが明記されています。
| 項目 | 現行 | 2027年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 3年以下 | 5年以下 |
| 罰金 | 300万円以下 | 500万円以下 |
| 併科 | — | 併科可(入管庁「改正法の概要」より) |
引上げの根拠は、育成就労制度を創設した改正法です。出入国在留管理庁の「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」でも、「不法就労助長罪の厳罰化」として「拘禁刑3年以下又は罰金300万円以下→5年以下又は500万円以下 ※併科可」と示されています。育成就労制度の運用開始日と同じ2027年4月1日以降が対象です。
さらに解説資料は、次の2点にも触れています。
育成就労制度の開始(2027年4月1日)は「新しい人材を受け入れられるようになる日」として語られがちですが、同じ日から受け入れ側の責任も重くなる、という側面があります。
もう一段先の話として、解説資料には次の記述があります。
欠格事由の話は、罰金を受けたら許認可そのものを失いかねないという意味で、建設業・産業廃棄物処理業・宿泊業・運送業など許認可を前提とする事業にとっては、罰則額以上のインパクトを持ちます。ただし現時点では「提案することも検討していく」段階であり、法改正が前提です。確定した制度ではない点にご注意ください。
なお、外国人雇用状況の届出は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)に基づき、外国人労働者(在留資格「外交」「公用」及び特別永住者を除く)の雇入れ・離職の際に事業主に義務付けられているもので、届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には30万円以下の罰金の対象とされています。

届出や在留カード確認の基本については「【2026年】外国人雇用の注意点|中小企業の届出と在留カード」で詳しく扱っています。アルバイト雇用が関わる場合は「資格外活動許可とは|週28時間の数え方と申請手続」もあわせてご確認ください。
適法に在留している方にとって、今回のパッケージで直ちに権利義務が変わるわけではありません。ただし、次の点は今後の実務に影響し得ます。
不法就労対策パッケージでは、偽変造在留カード対策の強化が掲げられています。ご本人にとっては、在留カードの携帯義務や、住居地変更をはじめとする各種届出といった基本的な義務を確実に果たすことが、そのまま自衛になります。
不法残留の新規発生には、在留期間更新・変更が不許可となったケース(約500人・3.5%)も含まれています。期限ぎりぎりの申請や、不許可後の対応の遅れは、そのまま在留資格を失うリスクにつながります。当事務所では、在留期間満了日の45日前を目安とした準備開始をおすすめしています(「【2026年】在留期間の更新はいつ申請?45日前が目安」)。
慎重に扱うべきテーマですが、制度として存在する枠組みを正確に知っておくことは重要です。解説資料には、次の3つの手続についての説明が付されています。
| 手続 | 概要 | 上陸拒否期間 |
|---|---|---|
| 退去強制 | 退去強制令書の発付を受けて送還される | 原則5年(事情によっては10年となる場合もある) |
| 出国命令 | 帰国を希望する場合に、一定の要件を満たすことを条件として、収容されることなく簡易な手続で出国できる | 原則1年 |
| 上陸拒否期間の短縮決定 | 退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により自ら退去しようとする場合に申請できる(入管法第52条第5項) | 5年→1年(在留資格「短期滞在」により上陸しようとする場合を除く) |
上陸拒否期間の短縮決定は、過去に退去強制されたこと又は出国命令により出国したことがない者に限るものとされ、申請者の素行や退去強制の理由となった事実その他の事情を考慮して相当と認めるときに決定されます。
解説資料では、被仮放免者・被監理者について、事情の変更等により法律上の要件を満たさなくなったことを把握した場合には、仮放免又は監理措置決定を取り消すなどして収容した上で帰国説得を行う方針が示されています。参考として、2025年末時点の退去強制令書発付後の被仮放免者数は1,987人、被監理者数は894人とされています。
⚠️ 在留資格を失っている状態での対応は、個別の事情によって取り得る選択肢が大きく異なります。自己判断で先延ばしにするより、早い段階で行政書士・弁護士等の専門家、または地方出入国在留管理局へご相談ください。在留特別許可の可否を含め、一般論として結論を断定できるものではありません。
いいえ。今回掲載されたのは、2026年5月22日公表のパッケージについての解説資料です。制度自体の変更ではありません。ただし解説の中には、2027年4月1日から適用される不法就労助長罪の厳罰化など、すでに確定した法改正の内容も含まれています。
解説資料では2027年4月1日以降、拘禁刑5年以下・罰金500万円以下に引き上げられるとされています。育成就労制度の運用開始と同じ日です。
そうとは言い切れません。解説資料が述べているのは、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れないという点です。確認は不可欠ですが、確認した上で就労が認められる範囲を超えて働かせていた場合など、他の事情によって責任が問われ得ます。
適法な在留・就労であれば、それ自体が問題となるものではありません。ただし、立入検査や確認の場面で在留カードの提示を求められる機会が増える可能性はあります。携帯義務を守り、就労資格の範囲内で活動していることを説明できる状態にしておくことが安心につながります。
解説資料では、2028年度中の導入を目指し、2026年4月から設計・開発作業を開始しているとされています。開始時期は今後変更される可能性があります。
はい。摘発の強化は特定の地域に限った施策ではなく、都道府県労働局等との連携が掲げられています。外国人を雇用している事業所であれば、地域を問わず点検の対象になり得ます。
今回の解説資料は、新しい規制を作るものではありませんが、「どの数字を見て、どこを重点的にやるつもりか」を政府側が明示した文書です。企業にとっての実務的な結論はシンプルで、2027年4月1日の厳罰化までに、在留カード確認・在留期限管理・雇用状況届出という3点を「記録の残る形」に整えることに尽きます。
外国人ご本人にとっては、更新・変更を切らさないこと、在留カードに関する届出を確実に行うことが、そのまま自衛になります。制度の趣旨を正しく理解し、必要な準備を早めに進めておけば、過度に不安になる必要はありません。
当事務所では、最新の制度動向を踏まえた上で、外国人ご本人・受入企業様の双方からのご相談を承っています。
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本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市