
2027年(令和9年)4月1日に始まる育成就労制度では、受け入れた外国人に日本語講習を受けさせるための措置をとることが、受入企業の義務として定められています。制度の要件そのものは既に知られていますが、実務で先に詰まるのは「では、その講習をどこに頼むのか」という点です。出入国在留管理庁は2026年7月、この問いに答えるための日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)を公表しました。この記事では、公表された一覧表の全322機関を実際に集計し、原則と経過措置の違い、地域による偏り、そして企業の人事ご担当者が2026年のうちに着手すべきことを、行政書士が整理します。
育成就労制度そのものの全体像は「育成就労制度とは|2027年4月開始・技能実習との違い」で解説しています。あわせてご覧ください。
育成就労制度には、日本語能力の向上を段階的に図るための仕組みが組み込まれています。出入国在留管理庁の説明によれば、育成就労外国人には次の2つが求められます。
| 場面 | 求められること |
|---|---|
| 就労開始前まで | 「日本語教育の参照枠」A1相当の日本語能力の試験に合格するか、それに相当する日本語講習(A1相当講習)を受講する |
| 3年間の育成就労の終了まで | 育成就労の目標となるA2相当の日本語能力に到達するための日本語講習(A2目標講習)を受講する |
ここで見落とされやすいのが、2つの性質が違うという点です。
つまり、A2目標講習のほうが、受入企業にとって回避しにくい負担になります。「試験に受かる人材を採ればよい」という発想だけでは、3年目までの手当てが抜け落ちます。
実務上は、「入口(A1)」より「出口(A2)」のほうが確実に講習の手配を要する、と押さえておくのが安全です。
出入国在留管理庁は、これらの日本語講習について、育成就労外国人の受入れ企業(育成就労実施者)等が、費用負担を含めこれらの日本語講習を受けさせるための措置をとることが義務付けられていると説明しています。
ポイントは次の2点です。
技能実習制度でも入国後講習が行われてきましたが、育成就労ではA1相当・A2目標という到達目標が明示され、それに対応する講習が制度上に位置づけられた点が変化です。人事ご担当者の視点では、採用にかかる費用に日本語講習費が乗る前提で予算を組む必要があります。
ここが本記事でもっとも重要な箇所です。
原則として、この日本語講習は、認定日本語教育機関の「就労のための課程」で行われることが想定されています。認定日本語教育機関とは、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律にもとづき、文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関です。その課程には「留学のための課程」「就労のための課程」「生活のための課程」の3種類があり、認定を受けていても「就労のための課程」を設置していない機関があります。
そのうえで、出入国在留管理庁は次の経過措置を設けていると説明しています。
育成就労法の施行後5年間を目途とする当面の間の経過措置として、認定日本語教育機関による「就労のための課程」でなくとも、登録日本語教員による講習で、教師1人に対して生徒が20人以下であることなどの一定の要件を満たしたものでも認めることとしている。
この経過措置があるため、認定日本語教育機関以外の日本語教育機関でも、その機関に在籍する登録日本語教員が育成就労外国人への日本語講習を提供できます。冒頭で触れた一覧表が3本に分かれているのは、この構造を反映しているからです。
⚠️ ここで区別すべきこと
公表されている一覧表は、次の3本です(いずれもExcel形式)。
| # | 一覧表 | 位置づけ | 掲載機関数 |
|---|---|---|---|
| ① | 認定日本語教育機関「就労のための課程」のみ | 原則ルート | 3機関 |
| ② | 認定日本語教育機関(①以外) | 経過措置ルート(登録日本語教員による講習) | 45機関 |
| ③ | 告示日本語教育機関 | 経過措置ルート(登録日本語教員による講習) | 274機関 |
| 合計 | 322機関 |
なお「告示日本語教育機関」とは、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)第7条第1項第2号の基準を定める省令の留学の在留資格に係る基準の規定にもとづき日本語教育機関等を定める件により、法務大臣が告示した日本語教育機関をいいます。認定(文部科学大臣)と告示(法務大臣)では、根拠となる法令も所管も異なります。
💡 最初に驚くのはここです。
原則ルートである①「就労のための課程」を持つ機関は、全国でわずか3機関、しかもいずれも東京都に所在しています。現時点で全国の受入企業がこの3機関だけを頼りにするのは、量的に成り立ちません。経過措置が置かれている理由が、数字から見て取れます。

各一覧表には、機関ごとに次の情報が掲載されています。
企業側から見て実用的なのは、「提供可否」「受入れ可能人数」「対面かオンラインか」の3点です。とくにオンライン対応の有無は、後述する地域の偏りを乗り越えられるかどうかを左右します。
一覧表を集計すると、提供可否の回答は次のように分かれます。
| 回答 | 機関数 | 割合 |
|---|---|---|
| 提供可能 | 62 | 約19% |
| 提供可能(2027年度から) | 1 | 約0.3% |
| 提供する方向で検討 | 179 | 約56% |
| 提供不可の方向で検討 | 36 | 約11% |
| 提供不可 | 26 | 約8% |
| 回答なし等(―) | 18 | 約6% |
| 合計 | 322 | — |
🔴 ここを混ぜて読まないでください。
「一覧表に322機関が載っている」ことと、「322機関に頼める」ことはまったく別です。現時点で「提供可能」と明言しているのは63機関(うち1機関は2027年度から)にとどまります。最多は「提供する方向で検討」の179機関で、全体の半数以上がまだ確定していない状態です。
加えて「提供不可」「提供不可の方向で検討」を合わせた62機関は、現時点では期待できません。
一覧表そのものにも、出入国在留管理庁は「受入れ企業(育成就労実施者・監理支援機関)等の関係者が日本語講習を円滑に依頼できるよう参考情報として提供するもの」という位置づけを明記しています。掲載されていること自体は、受託の確約ではありません。
また、この一覧表は令和8年(2026年)6月時点の調査結果です。「検討」と回答した機関の多くは、今後いずれかに動きます。数字は変わる前提で見るべきものです。
提供内容については、「提供可能」「検討」と回答した機関の多くが、A1相当講習・A2目標講習の両方、かつ対面・オンラインの両方を挙げています。オンラインのみ・対面のみという機関もあるため、自社の受入体制(寮の位置、シフト、通学時間)と突き合わせる必要があります。
所在地別に集計すると、偏りはさらにはっきりします。掲載機関数の多い順に10位までを挙げます。
| 都道府県 | 掲載機関数 |
|---|---|
| 東京都 | 70 |
| 大阪府 | 35 |
| 福岡県 | 25 |
| 愛知県 | 21 |
| 兵庫県 | 20 |
| 千葉県 | 18 |
| 埼玉県 | 14 |
| 神奈川県 | 12 |
| 静岡県 | 11 |
| 京都府 | 10 |
つまり、「近くの日本語学校に頼めばよい」という前提が成り立たない地域が相当数あるということです。ここで効いてくるのが、多くの機関が挙げているオンライン対応です。地方の受入企業にとっては、近隣で対面を確保するか、遠方の機関にオンラインで依頼するかという設計判断が、2027年4月より前に必要になります。
当事務所の所在する宮崎県を含む九州の状況も見ておきます。
| 県 | 掲載機関数 | うち「提供可能」 |
|---|---|---|
| 福岡県 | 25 | 2 |
| 鹿児島県 | 5 | 0 |
| 長崎県 | 3 | 0 |
| 佐賀県 | 2 | 1 |
| 熊本県 | 2 | 0 |
| 大分県 | 1 | 0 |
| 宮崎県 | 1 | 1 |
宮崎県の掲載は1機関のみです。ただしその1機関は「提供可能」と回答しており、A1相当講習・A2目標講習の双方に、対面・オンラインの両方で対応可能、講習の受入れ可能人数は80人、所属する登録日本語教員は33人と、規模の面では県内需要に一定程度応えうる内容が掲載されています(告示日本語教育機関、宮崎市所在)。宮崎県は、「提供可能」と明言した機関が存在する20都道府県のひとつです。
一方で、選択肢が1つしかないことの意味も直視すべきです。受入れ可能人数には上限があり、県内で育成就労の受入れが増えれば、枠は先に埋まります。近隣県を見ても、鹿児島・長崎・熊本・大分には、現時点で「提供可能」と明言した機関がありません。

地方の受入企業ほど、講習先の確保は早く動いたほうが有利です。 制度開始の直前に動き出すのは、避けたいところです。
2027年4月1日の運用開始まで、残された時間は多くありません。次の順で進めることをおすすめします。
外国人材の受入れ全般で企業が押さえるべき点は「外国人雇用の注意点|中小企業の届出と在留カード」でも解説しています。
育成就労で来日を予定している方、またはご家族が予定している方にとっても、この一覧表は無関係ではありません。
Q1. 一覧表に載っている機関なら、講習を引き受けてもらえますか。
A. そうとは限りません。出入国在留管理庁は、この一覧表を参考情報として提供していると明記しています。掲載は受託の確約ではなく、実際の可否・条件は各機関との個別のやり取りで決まります。とくに「提供する方向で検討」と回答している機関が179機関と最多である点にご注意ください。
Q2. 近くに日本語教育機関がありません。どうすればよいですか。
A. 一覧表に掲載された多くの機関がオンラインでの提供を挙げています。所在地にとらわれず候補を広げることが現実的な選択肢です。掲載機関がない県が8県ある一方で、オンライン対応の機関は各地にあります。
Q3. 認定日本語教育機関でなくても差し支えありませんか。
A. 施行後5年間を目途とする当面の間の経過措置として、「就労のための課程」でなくとも、登録日本語教員による講習で、教師1人に対して生徒が20人以下であることなどの一定の要件を満たせば認められることとされています。ただし経過措置であり、恒久的な仕組みとして示されているわけではありません。
Q4. 「就労のための課程」を持つ機関が3つしかないというのは本当ですか。
A. 令和8年6月時点の調査結果として公表された一覧表では、認定日本語教育機関の「就労のための課程」のみを対象とする表に3機関が掲載されており、いずれも東京都に所在しています。今後、課程を設置する機関が増える可能性はありますので、最新の情報をご確認ください。
Q5. A1相当の試験に合格していれば、日本語講習は不要になりますか。
A. いいえ。就労開始前のA1相当については試験合格による対応が示されていますが、それとは別に、3年間の育成就労の終了までにA2目標講習を受講することが求められています。入口だけで完結するものではありません。
Q6. 講習は何時間必要ですか。
A. 一覧表の提供内容欄では、A1相当講習・A2目標講習とも100時間以上という区分で各機関が回答しています。具体的な時間数や内容は機関ごとに異なりますので、個別にご確認ください。
Q7. 監理支援機関が講習先を手配してくれるのではないですか。
A. 一覧表は育成就労実施者(受入企業)と監理支援機関の双方を含む関係者に向けて提供されています。どちらが確保するかは当事者間の取り決めによります。役割が曖昧なまま2027年4月を迎えないよう、早めに整理しておくことをおすすめします。
育成就労制度では、A1相当講習とA2目標講習という2つの日本語講習について、受入企業が費用負担を含めて受けさせる措置をとることが義務づけられます。とりわけA2目標講習は、3年間の育成就労の終了までに受講することが前提であり、試験合格での代替という形は示されていません。
出入国在留管理庁が2026年7月に公表した一覧表を集計すると、掲載は322機関ですが、原則ルートである「就労のための課程」を持つ認定日本語教育機関はわずか3機関(いずれも東京都)です。残りは、施行後5年間を目途とする当面の間の経過措置にもとづく、登録日本語教員による講習の受け皿です。
そして、「提供可能」と明言しているのは63機関にとどまり、半数以上の179機関は「提供する方向で検討」の段階にあります。掲載があるのは39都道府県で、8県はゼロ、「提供可能」で絞ると20都道府県のみです。宮崎県の掲載は1機関ですが、その機関は「提供可能」と回答しています。
2027年4月まで、実質的に残された準備期間は限られています。制度の要件を理解することと、講習先を実際に確保することは別の作業です。 早めに一覧表を確認し、候補との接触を始めておくことをおすすめします。
「【育成就労 第1回】2027年4月1日までに何が起きる? 受入企業が今すぐ確認する3点」を当事務所の行政書士が解説した動画(9分49秒)です。制度の施行前に収録しているため、今後の政省令・告示で内容が変わる可能性があります。
当事務所では、最新の制度動向を踏まえた上で、外国人ご本人・受入企業様の双方からのご相談を承っています。
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本記事は2026年8月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市