
日本を離れて海外にお住まいの方が、日本の相続手続や不動産登記に関わることになったとき、最初につまずくのが「住民票がない」「印鑑証明が取れない」という点です。
その代わりになるのが、日本の在外公館(大使館・総領事館)が発給する在留証明と署名証明です。よく似た名前ですが、証明している中身も、取り方も、まったく違います。2025年から始まったオンライン交付(e-証明書)と電子戸籍パスも含めて整理します。
先に要点をまとめます。
在留証明は、外国にお住まいの日本人がどこに住所(生活の本拠)を有しているか、又はどこに住所を有していたかを、その地を管轄する在外公館が証明するものです。外務省は、日本国内の提出先機関から外国における住所証明の提出を求められた場合に発給される「一種の行政証明」と説明しています。
外務省が挙げている主な用途は次のとおりです。
さらに外務省は、本人申請を原則とする理由の説明のなかで、在留証明が遺産分割協議や不動産登記といった「申請される方にとって重要な用途」に使われることを挙げ、申請者の意思と提出先機関の確認を行うと同時に本人の生存確認を行っている、と明記しています。相続の場面で在留証明が登場するのは、この文脈です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 国籍 | 日本国籍を有する方(二重国籍者を含む)のみ。日本国籍を離脱・喪失した方、日系人を含む外国籍者は対象外 |
| 滞在期間 | 現地に既に3か月以上滞在し、現在居住していること。申請時に3か月未満でも、今後3か月以上の滞在が見込まれる場合は対象 |
| 住民登録 | 原則として日本に住民登録がないこと |
| 申請者 | 証明を必要とする本人が公館へ出向いて申請するのが原則 |
やむを得ない事情がある場合は委任状による代理申請ができる場合もあるとされていますが、公館への事前相談が前提です。
💡 日本国籍を離脱・喪失された方に対しては、例外的な措置として「居住証明」で対応する場合がある、とも案内されています。
署名証明は、日本に住民登録をしていない海外在留の方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続のために発給されるものです。証明している中身は、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことです。
日本では不動産登記、銀行ローン、自動車の名義変更など、さまざまな場面で印鑑証明の提出が求められます。ところが日本での住民登録を抹消して外国に住むと、住民登録の抹消と同時に印鑑登録も抹消されます。そのため法務局や銀行等では、印鑑証明に代わるものとして署名証明の提出を求めている、というのが制度の背景です。
証明の方法は2種類あります。どちらの形式にするかは提出先の意向によります。申請の前に提出先へ確認してください。
| 形式 | 内容 | イメージ |
|---|---|---|
| 形式1 | 在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割り印を行う | 遺産分割協議書などの書類そのものと一体になる |
| 形式2 | 申請者の署名を単独で証明する | 証明書だけが独立して発行される |
日本から書類が送られてきて「これに署名してほしい」と言われている場合は、形式1が想定されていることが多くなります。その場合はその書類を持って公館へ行くことになります。
なお、署名証明書の様式は2009年(平成21年)4月1日から変更され、それまで記載のなかった署名者の身分事項(生年月日、日本旅券番号)が加わっています。古い書式の見本を参考にしている場合はご注意ください。
| 項目 | 在留証明 | 署名証明 |
|---|---|---|
| 何を証明するか | 外国のどこに住所があるか(あったか) | 署名が領事の面前でなされたこと |
| 日本国内の何の代わりか | 住所の証明(住民票に近い役割) | 印鑑証明 |
| 手数料(1通) | 邦貨1,200円相当 | 邦貨1,700円相当 |
| 支払い | 現金(現地通貨)。オンライン申請時はクレジットカード決済も可 | 現金(現地通貨) |
| 代理申請 | やむを得ない事情があれば委任状で可能な場合あり | できません |
| 郵便申請 | 受付あり(ただし受取時に一度は窓口へ) | できません |
| オンライン申請・e-証明書 | 対象になっている公館が多い | 在米大使館の例では対象外 |
| 対象者 | 日本国籍(二重国籍を含む) | 日本国籍。元日本人は個別相談 |
※手数料は「邦貨◯◯円相当」とされ、実際の支払いは現地通貨での相当額になります。

4番目は見落としやすい項目です。相続や不動産登記では番地まで求められることがありますので、提出先に「本籍地は番地まで必要か」を先に確認してから申請してください。後から気づくと取り直しになります。
署名証明の必要書類は少ないのですが、その代わり「本人が行く」というハードルが残ります。管轄の在外公館が遠方にある地域にお住まいの場合は、日程の確保が最大のコストになります。
⚠️ 在外公館でも印鑑証明を取り扱っています。印鑑証明のほうを希望される場合は、必要書類等を事前に公館へお問い合わせください。
在外公館の証明は、「オンライン在留届(ORRネット)」を利用したオンライン申請を受け付けています。さらに2025年(令和7年)5月27日から、証明オンライン申請を導入している在外公館(イラン及びロシアに所在の在外公館を除く)では、紙媒体の証明書を窓口で受け取るか、電子化した証明書(e-証明書)をオンラインで受け取るかを選べるようになりました。
e-証明書を選んだ場合、申請者は在外公館の窓口に一度も行くことなく証明書を受け取れます。
e-証明書の対象となる証明書の種類は在外公館ごとに異なります。一例として、在アメリカ合衆国日本国大使館の案内では次のように整理されています。
| 区分 | 証明 |
|---|---|
| 対象となる主な証明 | 在留証明、出生証明、婚姻証明、離婚証明、戸籍記載事項証明 等 |
| 対象外 | 署名証明、死亡証明、旅券所持証明、自動車免許抜粋証明、警察証明 |
同大使館の案内では、審査完了まで概ね3〜5営業日を要し、早期発給は行わないため急ぐ場合は窓口申請を勧める、とされています。また日本国内からは申請できず、管轄地域内からの申請とされています。これらは公館ごとの運用ですので、ご自身の管轄公館のホームページで確認してください。
⚠️ 提出先がe-証明書を受け取ってくれるかは別の問題です。
外務省は、提出先によってはe-証明書やそれを印刷したものが受理されず、従来の紙媒体の証明書を求められることもあるため、申請の前に提出先へ対応可否を確認することを勧めています。相続や登記のように提出先が決まっている手続では、この確認を先にしてください。
在外公館の証明で戸籍謄(抄)本が必要な場合、2025年(令和7年)3月24日以降は「電子戸籍パス(戸籍電子証明書提供用識別符号)」で代用できます。従来どおり紙の戸籍謄(抄)本を出すこともできます。
電子戸籍パスは、行政機関が電子戸籍(戸籍電子証明書)の内容を確認するためのパスワードで、16桁の数字・有効期間は発行から3か月です。法務省は、マイナンバーとの関係はないと明記しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得先 | マイナポータル(無料)/市区町村の窓口(有料) |
| 有効期間 | 発行から3か月。期間内なら複数の手続に利用可 |
| 提出方法(窓口申請) | 電子戸籍パスが記載された紙(手書きでも可)を提出 |
| 提出方法(オンライン申請) | 申請時に電子戸籍パスを入力 |
| オンライン取得できる人 | 本人(15歳以上のみ) |
| 市区町村窓口で取得できる人 | 本人等(戸籍に記載されている者、配偶者、直系尊属、直系卑属)等 |
海外から日本の市区町村に戸籍謄本を取り寄せる手間を考えると、効果の大きい変更です。なお市区町村の窓口で取得する場合は有料ですが、戸籍証明書と同時に取得する場合は手数料がかからないとされています。

⚠️ 相続で効いてくる注意点があります。
マイナポータルを利用したオンラインでは除籍電子戸籍パスは取得できません。除籍が必要な場合は市区町村の窓口で取得することになります。相続では除籍謄本をたどる場面がありますので、オンラインだけで完結すると考えないでください。
電子戸籍パスは在外公館の証明手続のほかに、パスポート申請、運転免許の本籍情報の変更(マイナ免許証のみを保有する方)、相続人申告登記の申出手続、所有不動産記録証明書の交付請求でも利用できるとされています。
名前が似ているため混同されやすいのですが、次のように整理すると分かりやすくなります。
📄 在留証明・署名証明
出すのは海外の在外公館。書類は海外 → 日本へ提出します。
🌐 公印確認・アポスティーユ
出すのは外務省(本省)。書類は日本 → 外国へ提出します。
海外にお住まいの方が日本の相続手続に参加する場面では、在留証明・署名証明のほうが登場します。逆に、日本の戸籍や登記事項証明書を外国の役所に出す場面では公印確認・アポスティーユのほうです。両方が同時に必要になる案件もあります。
在留証明も署名証明も日本国籍のある方が対象ですので、外国籍の方ご本人が直接使うものではありません。ただし、次のような形で関わってくることがあります。
外国人材の受入れとは別のテーマに見えますが、海外に人を出している企業では実務的に効いてきます。
いずれも同じ在外公館で取り扱っていますので、同じ日に申請すること自体は可能です。ただし署名証明は領事の面前での署名が前提ですので、署名すべき書類を持参できているかを先に確認してください。必要書類や受付時間は公館ごとに異なりますので、事前にお問い合わせください。
事前に署名(又は拇印)をした文書を持参した場合は、事前の署名を抹消したうえで、領事の面前で改めて余白に署名し直すという取扱いになります。書類が使えなくなるわけではありませんが、体裁が乱れることを避けたい場合は、日本側に再送を依頼することも検討してください。
提出先の意向によります。法務局・金融機関・司法書士など、その書類を受け取る側に確認してください。日本から署名すべき書類が送られてきている場合は形式1が想定されていることが多くなりますが、判断は提出先です。
遠隔地にお住まいの方や病気等の事情で公館へ出向くことが困難な場合は、郵便による申請も受け付けています。ただし、出来上がった証明書は手数料の納付後に窓口で渡されるため、申請人本人又は代理人(委任状が必要)が一度は在外公館へ出向くことになります。オンライン申請でe-証明書を選べる公館であれば、窓口に行かずに受け取れます。
在留証明の発給条件は「現地に既に3か月以上滞在し、現在居住していること」ですが、申請時に3か月未満であっても、今後3か月以上の滞在が見込まれる場合は発給の対象とされています。その場合は賃貸契約書や公共料金の請求書など、今後3か月以上の滞在が確認できるものを用意してください。
在外公館の証明申請については、戸籍謄(抄)本に代えて電子戸籍パスを提出できるようになりました。ただし従来どおり紙の戸籍謄(抄)本を提出することもできます。また、除籍の電子戸籍パスはマイナポータルでは取得できません(市区町村の窓口での取得になります)。提出先が在外公館以外の場合は、その提出先が電子戸籍パスに対応しているかを確認してください。
外務省の案内は「邦貨◯◯円相当」という書き方で、支払いは現金(現地通貨)です。実際の現地通貨額は公館が定めますので、金額は管轄公館のホームページでご確認ください。オンライン申請を行った場合は、クレジットカードによる日本円でのオンライン決済も可能です(イラン及びロシアに所在の在外公館を除く)。
制度の中身は §1〜§7 のとおりですが、動き出す前に確認しておくと取り直しを避けられるのは、次の4点です。
いずれも「役所に聞く」のではなく書類を受け取る側に聞くという点が共通しています。手数料は在留証明1通1,200円相当・署名証明1通1,700円相当(現金・現地通貨)で、金額そのものは大きくありません。実務で効いてくるのは、やり直しになったときの往復の時間です。
当事務所では、最新の制度動向を踏まえた上で、外国人ご本人・受入企業様の双方からのご相談を承っています。
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ご自身で出入国在留管理局へ在留資格の申請をされる方へ。提出の前に、申請書と添付書類を確かめ、足りない書類や気をつける点をお伝えします。オンライン(Google Meet・20分程度)でも、LINE でもお受けします。
・対象:在留資格の認定・変更・更新の申請です(永住は、宮崎県内にお住まいの方に限ります)。帰化は対象外です。
・オンライン(Google Meet)は、1つの申請につき1回です。LINE でのお返事は、同じ申請について、提出の前までお受けします。
・LINE のお返事の目安は、原則2営業日以内です(土日・祝日はお休みです。混み合うときは、お返事が延びることがあります)。
・書類の写しは、LINE かメールでお送りください。在留カードは表面だけを、マイナンバーの面は送らないでください。
・お伝えするのは当事務所の意見です。許可を保証するものではなく、結果は出入国在留管理局の判断によります。
・お伝えするのは、足りない書類や気をつける点までです。申請書の作成や書き直しの代行、文案の作成はしません。許可の見込み(通るかどうか)もお伝えしません(当事務所にご依頼いただく場合は、セルフ準備コース・ライトプラン・スタンダードプランをご案内します)。
・事実と異なる内容の書類だと分かったとき、またはご本人(ご家族を含みます)の申請でないと分かったときは、チェックをお断りします。
本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や運用は今後変更される可能性があります。手数料額・必要書類・オンライン申請の対象は在外公館ごとに異なりますので、実際の申請にあたっては証明を受けようとする在外公館の公式情報、または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市