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育成就労の給与は課税対象|租税条約の免税は原則なし

無地の白い封筒と紺色のフォルダー、小さな天びんを置いた机のイメージ。育成就労の給与と課税を象徴。

2027年4月1日に始まる育成就労制度で働く外国人(育成就労外国人)の給与は、原則として所得税の課税対象となり、源泉徴収の対象になります。技能実習生の一部では、租税条約の免税規定により給与が免税とされるケースがありましたが、育成就労外国人は原則としてその対象になりません。国税庁が2026年9月15日付の文書回答でこの取扱いを示し、出入国在留管理庁(以下、入管庁)も2026年10月15日に更新した「育成就労制度Q&A」で、住民税も同様に課税対象になると説明しています。本記事では、受入企業の人事・給与ご担当者と、育成就労で来日を考えている外国人ご本人に向けて、何が変わるのか、何を準備すればよいのかを整理します。

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1. 結論:先に押さえておきたい4点

  • 育成就労外国人が受入れ機関(育成就労実施者)から受け取る給与は、原則として給与所得として所得税の課税対象で、源泉徴収の対象です(国税庁 文書回答 2026年9月15日)。
  • 租税条約の「専ら…訓練を受ける」者の免税規定は、育成就労外国人には原則として当てはまりません。技能実習生と同じ扱いにはならない点に注意が必要です。
  • 入管庁の育成就労制度Q&A(Q80)は、住民税も所得税と同様に課税対象になると説明しています。
  • 受入企業は、免税を前提にした給与計算や「手取り」の説明をしていないかを、制度の運用開始前に見直しておくことが大切です。

2. 国税庁の文書回答の内容

2-1. 誰が何を照会したか

2026年9月3日付で、入管庁の政策課長と厚生労働省の参事官(海外人材育成担当)が、国税庁課税部長に対して「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」を照会しました。国税庁は2026年9月15日付で、照会の事実関係を前提とする限り「貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。

照会の要点は次のとおりです。

  • 租税条約の中には、個人が「専ら…訓練を受ける」者に当たる場合に、一定の要件のもとで日本で支払われる給与の所得税を免除する規定を持つものがあります(照会文では例として日タイ租税条約第19条が挙げられています)。
  • 育成就労制度の目的と事実関係からすると、育成就労外国人は原則としてこの「専ら…訓練を受ける」者に当たらず、給与は給与所得として所得税と源泉徴収の対象になる、という見解です。

2-2. そう判断された理由

照会文は、技能実習制度と育成就労制度の違いを理由として挙げています。

  • 育成就労制度は、人手不足分野での人材育成と人材確保を目的とする制度で、技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度とは目的が異なります。
  • 技能実習では帰国が制度上の原則でしたが、育成就労では帰国を前提とする要件等が撤廃されています。
  • 育成就労外国人は、受入れ機関との雇用契約に基づき業務に従事し、その対価として給与を受け取ります。
  • 技能実習法にあった「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」という趣旨の規定が育成就労制度には設けられず、「必須業務」の時間の制限も緩和され、「関連業務」「周辺業務」の区分も廃止されて、柔軟な働き方が可能になりました。

育成就労外国人は、原則として、租税条約で定める「専ら…訓練を受ける」者に該当せず、給与の収入金額は所得税の課税対象及び源泉徴収の対象になるものと考えられる(照会者の見解の要旨)。

国税庁 文書回答事例「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」別紙3(要旨)

2-3. 文書回答の位置づけ

国税庁は回答に、①照会の事実関係を前提とした一般的な回答であり、個々の具体的な取引等に当てはめると異なる課税関係が生じることがある、②国税庁としての見解であり、個々の納税者の申告内容等を拘束するものではない、という2点を添えています。「原則として」課税対象という表現であることも含め、個別の事情がある場合は所轄の税務署や税理士に確認してください。

ベージュと紺色の無地のノートを並べたイメージ。技能実習から育成就労への切り替わりを象徴。

3. 技能実習との違い

項目技能実習育成就労
制度の目的技能移転による国際貢献人手不足分野での人材育成・人材確保
帰国帰国が制度上の原則帰国を前提とする要件等を撤廃
租税条約の免税規定一部の国から来日する技能実習生は、免税とされるケースがあった原則として免税規定の対象とならない
所得税免税が適用されるケースを除き課税原則として課税対象・源泉徴収の対象
住民税(本記事の出典では扱われていません)所得税と同様に課税対象(入管庁Q&A Q80)

なお、2027年4月1日の時点ですでに来日している技能実習生は、引き続き認定された計画に基づいて技能実習を続けることができます(入管庁Q&A Q77)。今回の国税庁の文書回答は育成就労外国人の給与についてのものです。

4. 入管庁の育成就労制度Q&A(Q80)

入管庁が2026年10月15日に更新した「育成就労制度Q&A」には、【課税関係】としてQ80が掲載されています。そこでは、育成就労外国人が受け取る給与は技能実習生の場合と異なり、原則として租税条約の免税規定の対象とならず所得税の課税対象となること、住民税も所得税と同様に課税対象となることが説明され、詳細は国税庁ホームページの文書回答を確認するよう案内されています。

制度の所管官庁が、受入れの手続を説明するQ&Aの中で税の扱いにまで触れている点を踏まえ、当事務所としては、受入企業や監理支援機関が外国人ご本人に事前に説明しておくことをおすすめします。

無地の封筒と白紙のノートを置いたイメージ。育成就労外国人の給与計算と源泉徴収の準備を象徴。

5. 受入企業の給与計算で確認したいこと

5-1. 所得税(源泉徴収と年末調整)

所得税法では、居住者(国内に住所を有する個人、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人)に国内で給与を支払う者は、支払の際に所得税を徴収し、原則として徴収した月の翌月10日までに国に納付しなければなりません(所得税法第2条第1項第3号・第183条)。また、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した居住者については、その年最後の給与の支払の際に年末調整を行います(同法第190条)。

育成就労外国人を受け入れる企業は、日本人の従業員と同じ流れで源泉徴収と年末調整を組み込んでおく必要があります。

5-2. 住民税(前年の所得に、翌年度に課税)

個人住民税の所得割は前年の所得をもとに計算され(地方税法第32条・第313条)、賦課期日であるその年の1月1日(同法第39条・第318条)に住所がある都道府県・市町村で課税されます(同法第24条・第294条)。給与から差し引く特別徴収の場合、市町村から通知された税額を6月から翌年5月まで、毎月の給与から徴収して納入します(同法第321条の5)。

たとえば2027年に来日して働き始めた方は、2027年分の所得をもとに、2028年1月1日に住所がある市町村で住民税が課税され、特別徴収であれば2028年6月分の給与から差し引きが始まる、という流れになります。住民税の差し引きが始まる前と後で「手取り」が変わるため、あらかじめ説明しておくことが大切です。

5-3. 見直しのチェックリスト

  1. 技能実習で免税を前提にした給与計算の設定を、育成就労外国人にそのまま使っていないか
  2. 求人や雇用条件の説明で、「税金がかからない」「手取りは額面どおり」といった前提で説明していないか
  3. 所得税の源泉徴収・年末調整、住民税の特別徴収の流れを社内(または委託先)で確認したか
  4. 特別徴収の場合、来日した翌年の6月分の給与から住民税の差し引きが始まることを、本人が分かる言葉で説明できるか
  5. 個別の事情(扶養控除の申告など)がある場合に、税理士や税務署に確認する窓口を決めているか

6. 外国人ご本人と、企業の人事ご担当者へ

外国人ご本人の方へ

  • 育成就労で日本で働く場合、給与からは原則として所得税が差し引かれ、来日した翌年の6月分の給与からは住民税も差し引かれます(給与から差し引く特別徴収の場合)。
  • 母国の知り合いが技能実習生だったときに「税金がかからなかった」と聞いていても、育成就労では原則として同じ扱いになりません。
  • 給与明細の見方や税額がわからないときは、受入れ企業の担当者や、お住まいの地域の税務署・市町村の窓口に相談してください。

企業の人事ご担当者へ

  • 制度の運用開始は2027年4月1日ですが、育成就労計画の認定の施行日前申請は2026年9月1日から外国人技能実習機構で受け付けられています(入管庁Q&A Q3)。求人・雇用条件の説明は計画づくりと並行して進むため、税の説明もこの段階で整えておくと安心です。
  • 宮崎県内の受入企業さまは、受入れ人数枠の扱い(指定区域)もあわせて確認しておくと、受入れ計画が立てやすくなります。
  • 具体的な税額の計算や個別の税務判断は、税理士または税務署にご確認ください。当事務所は在留資格や育成就労の受入れ手続の面からお手伝いします。

7. よくあるご質問

Q1. 育成就労外国人の給与は、すべての国の出身者で課税されますか?

国税庁の文書回答と入管庁Q&Aは、育成就労外国人は「原則として」租税条約の免税規定の対象とならないと説明しています。個別の事情によっては異なる課税関係が生じることがあると国税庁も述べているため、特別な事情がある場合は所轄の税務署や税理士に確認してください。

Q2. 技能実習生として受け入れている人の扱いも変わりますか?

今回の文書回答は育成就労外国人の給与についてのものです。2027年4月1日の時点ですでに来日している技能実習生は、引き続き認定された計画に基づいて技能実習を続けることができます(入管庁Q&A Q77)。技能実習生の税の扱いは、従来どおり個別に確認してください。

Q3. 住民税はいつから差し引かれますか?

住民税は前年の所得をもとに、その年の1月1日に住所がある市町村等で課税されます。特別徴収の場合は6月から翌年5月までの給与から差し引かれます。そのため、来日した年の所得にかかる住民税は、翌年1月1日に日本に住所があれば、翌年6月分の給与から差し引きが始まるという流れになります。

Q4. 源泉徴収の対象になると、何をする必要がありますか?

給与を支払う企業は、支払の際に所得税を徴収し、原則として翌月10日までに納付します(所得税法第183条)。扶養控除等申告書を提出した方については年末調整も行います(同法第190条)。日本人の従業員と同じ給与計算の流れに乗せることになります。

Q5. 監理支援機関は何をすればよいですか?

入管庁が育成就労制度Q&Aで課税関係を説明していることから、当事務所としては、受入れ企業や外国人ご本人に対して、給与から所得税・住民税が差し引かれることを事前に伝えておくことをおすすめします。説明の方法や内容は、各監理支援機関の運用に沿って検討してください。

8. まとめ:免税の前提を見直し、手取りの説明を整える

育成就労外国人の給与は、原則として租税条約の免税規定の対象とならず、所得税・住民税の課税対象です。国税庁の文書回答(2026年9月15日)と入管庁の育成就労制度Q&A(2026年10月15日更新)がそろってこの取扱いを示しました。技能実習の感覚のまま「税金はかからない」と説明してしまうと、来日後の手取りの食い違いからトラブルになりかねません。制度の運用開始までに、給与計算の設定と本人への説明を見直しておきましょう。育成就労制度の全体像や監理支援機関の選び方は、関連記事「育成就労制度とは|2027年4月開始・技能実習との違いを解説」「監理支援機関とは|監理団体との違いと受入企業の確認点」で解説しています。宮崎県内の受入れ人数枠は「育成就労の受入れ人数枠|宮崎は「指定区域」で最大3倍」をご覧ください。

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本記事は2026年10月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。

本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭

行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表

所在地:宮崎県宮崎市

出典(一次情報)

  • 国税庁「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」(文書回答事例・回答 2026年9月15日) https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/gensen/260915/index.htm
  • 国税庁 同 照会文(別紙) https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/gensen/260915/01.htm
  • 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(2026年10月15日更新) https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html
  • e-Gov法令検索「所得税法」(第2条・第28条・第183条・第190条) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
  • e-Gov法令検索「地方税法」(第24条・第32条・第39条・第294条・第313条・第318条・第321条の5) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226

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