
出入国在留管理庁は2026年9月2日、「育成就労に関する二国間の協力覚書」のページを更新し、ラオスとの協力覚書を掲載しました。これで締結済みはタイ・ウズベキスタン・スリランカ・ラオスの4か国です。
育成就労では、監理支援機関が送出機関から取次ぎを受ける形の受入れは、原則としてこの覚書を作成した国からのみ認められます。技能実習の17か国との差、そして「推薦状」が要る5か国との違いを、入管庁の一次情報で整理します。
施行日前申請そのものの流れは「育成就労計画の施行日前申請|9月1日受付開始」で扱っています。本記事は、その前提となる「送出国の側」の話です。
出入国在留管理庁(以下、入管庁)の育成就労制度のページには「更新情報(UPDATE)」欄があり、2026年9月2日付けで「育成就労に関する二国間の協力覚書」を更新した旨が掲載されました。更新の中身は、ラオス人民民主共和国との協力覚書の追加です。
覚書の本文(仮訳)によれば、ラオスとの覚書は2026年8月5日に東京で、2026年8月31日にビエンチャンで署名されています。署名から2日後の掲載という、かなり早い公表です。
育成就労制度は2027年4月1日に運用が開始され、2026年9月1日からは育成就労計画の認定に係る施行日前申請が始まっています。「どの国から受け入れられるのか」は、準備の順序を左右する情報です。
二国間協力覚書は、英語の Memorandum of Cooperation の頭文字をとってMOCと呼ばれます。日本国政府(法務省・外務省・厚生労働省・警察庁)と送出国政府との間で、育成就労外国人の送出しと受入れに関する約束を定める文書です。
目的は、悪質な送出機関を排除し、送出しの適正性を確保することにあります。技能実習制度で問題となった、送出機関による高額な手数料の徴収や保証金・違約金の設定といった事象を防ぐ枠組みが、覚書と、それに基づく「認定送出機関」の仕組みです。
覚書の主な役割は次の3点です。
なお覚書は、国と国との条約とは性格が異なります。例えばスリランカとの覚書には、目的の項に「本覚書は、国際法に基づく法的拘束力のある義務を生じるものではなく、各国の法令に従って実施されるものとする」との一文が置かれています。
ここが本記事でもっとも実務に効く点です。入管庁の「育成就労制度運用要領」第4章は、外国の送出機関から取次ぎを受ける監理型育成就労について、次のように述べています。
悪質な送出機関を排除し、適正な送出しを確保するため、原則として、日本国政府と送出国政府との間で二国間取決めを作成している国からのみ、当該国の国籍を有する育成就労外国人を受け入れることができます。
出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章
つまり、覚書のない国からは、通常の(監理支援機関を通じた)育成就労の受入れは原則としてできません。2026年9月3日時点で、その「作成国」は4か国です。
例外として、運用要領は次の2つの形態を挙げています。いずれも送出機関を介さず、海外の子会社や取引先から直接受け入れる形態であるためです。
ただし運用要領は、この例外についても注意を促しています。送出国の国内法令によっては、送出機関を介さない日本への送出しがその国の法令に違反するとされる場合があるため、申請前に受入れ企業側で送出国の法令を確認するよう求めています。
さらに、認定送出機関リストとの関係も明確です。運用要領は「同リストに記載がない送出機関から取次ぎを受けたものについては、育成就労計画の認定を受けることができません」と述べています。リストは外国人育成就労機構(施行までは外国人技能実習機構)のホームページで順次公表される予定で、各機関には英字3桁・数字6桁の9桁の送出機関番号が付されます。申請書には、この番号を記載することとされています。
覚書はいずれも英語で2通作成され、日本側とその国の側がそれぞれの都市で署名する形をとっています。署名日は国ごとに異なります。
| 国 | 日本側の署名 | 相手国側の署名 |
|---|---|---|
| タイ | 2026年5月20日・東京 | 2026年6月2日・バンコク |
| ウズベキスタン | 2026年5月20日・東京 | 2026年6月29日・タシケント |
| スリランカ | 2026年5月20日・東京 | 2026年7月23日・コロンボ |
| ラオス | 2026年8月5日・東京 | 2026年8月31日・ビエンチャン |
覚書に基づく協力は、いずれも後の署名の日から開始します。したがって、実際に効力を持ち始めた順序はタイ→ウズベキスタン→スリランカ→ラオスです。入管庁の2026年6月4日付け報道発表資料も、タイとの覚書について「育成就労制度に関する協力覚書については、今回のタイ王国との間の覚書が初めての作成となります」と記しています。
有効期間の定めは4か国で共通しています。
比較の対象になるのが、技能実習制度の二国間取決めです。入管庁の「二国間取決め・認定送出機関」のページには、作成順に17か国が掲載されています。
| 制度 | 作成国数 | 内訳 |
|---|---|---|
| 技能実習 | 17か国 | ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インドネシア、ネパール、東ティモール、フィジー |
| 育成就労 | 4か国 | タイ、ウズベキスタン、スリランカ、ラオス |

育成就労の4か国は、いずれも技能実習でも取決めがある国です。一方で、技能実習の主要な送出国であるベトナム・インドネシア・フィリピン・ミャンマーなどは、2026年9月3日時点で育成就労の覚書がまだ掲載されていません。
技能実習と育成就労は別の制度であり、技能実習の取決めが育成就労にそのまま引き継がれるわけではありません。入管庁のタイとの覚書に関する報道発表資料も、「タイ王国との間では、既に技能実習制度に関する協力覚書を作成しているところ、技能実習制度に替わり育成就労制度が運用開始されることに伴い、本覚書を作成した」と説明しています。制度ごとに作り直すという整理です。
残る国については施行に向けて順次協議が進むものとみられますが、時期は公表されていません。自社が想定する国の覚書がいつ掲載されるかが、採用計画の前提になります。
もう一つ、混同しやすい国リストがあります。入管庁の「育成就労制度に係る施行日前申請」のページに掲載されている、推薦状の発行対象国5か国です。
| リスト | 掲載されている国 |
|---|---|
| 協力覚書が掲載済み(4か国) | タイ、ウズベキスタン、スリランカ、ラオス |
| 推薦状を発行することとしている国(5か国) | インドネシア、カンボジア、キルギス、ベトナム、ラオス |
💡 2つのリストで重なるのはラオスだけです。これは誤りではなく、それぞれが指している範囲が違うことによります。入管庁のページは、推薦状について「申請を行う前に二国間取決めを作成した国、又は作成中の国から、国ごとの『推薦状』を取得するようお願いします」と記載しています。つまり推薦状のリストは、覚書がまだ掲載されていない「作成中」の国を含んでいます。逆に、覚書があるからといって推薦状が要るとは限りません。
推薦状は、送出国の公的機関が作成し、対象者ごとに申請時(施行日前申請を含む)に提出するものです。参考様式第1-6号が用意されており、別紙を用いて複数の対象者分をまとめて発行することもできます。監理型育成就労のうち取引上密接な関係を有する外国の機関の事業所職員を受け入れる場合と、単独型育成就労の場合は除かれます。
実務上の要点は次のとおりです。
4か国の覚書は同じ構成をとっており、日本側の約束、送出国側の約束、送出機関の認定基準(別添)などで構成されています。企業実務に関係の深い項目を抜き出します。
| 項目 | 覚書の定め |
|---|---|
| 送出機関の認定 | 送出国政府が、日本の省令の要件を満たす送出機関を認定し、リストを提供する |
| 手数料の透明化 | 認定送出機関は、徴収する手数料等の算出基準を明確に定め、ウェブサイト等で公表し、本人と監理支援機関に説明する |
| 保証金・違約金 | 保証金の徴収や財産の管理、契約不履行の違約金を定める契約を過去5年以内に行っていないこと |
| 受入れの一時停止 | 送出国側が約束を適切に果たしていないと認められ、協議でも解決しない場合、日本側は書面通告により受入れを一時停止できる |
| 送出しの一時停止 | 日本側が約束を適切に果たしていないと認められ、協議でも解決しない場合、送出国側は書面通告により送出しを一時停止できる |
| 受入れ見込数 | 分野ごとの受入れ見込数を公表し、基本的にこれを受入れ人数の上限として運用する。超過した分野では育成就労計画の認定を一時停止できる |
このうち受入れ見込数の超過による認定の一時停止は、採用計画に直接影響します。分野ごとの上限が先に埋まれば、覚書のある国であっても、その分野の計画認定が止まる場合があるということです。
なお、送出機関に支払う費用の上限は覚書ではなく省令で定められており、育成就労計画に記載された報酬の月額(所定内賃金)の2か月分を超えないこととされています(育成就労法施行規則第21条)。
細部は国ごとに一様ではありません。例えばスリランカとの覚書には、送出しの一時停止を解除する際に外交ルートを通じて直ちに通知し、再開の方法を協議できるとする定めが置かれています。取引先の国の覚書は、その国のものを個別に確認するのが確実です。

受入れを検討している企業にとって、覚書の有無は「準備を始められるかどうか」の前提条件になります。2026年9月時点で確認しておきたい点を整理します。
技能実習からの切替えを予定している企業は、同じ送出機関・同じ国でそのまま続けられるとは限らない点にご留意ください。技能実習の取決めは17か国ありますが、育成就労は現時点で4か国です。
これから育成就労で日本での就労を考えている方にとって、覚書は次の点に関わります。
入管庁のページから覚書の本文を確認する際、2026年9月3日時点で2つ気をつけたい点があります。
📄 掲載順は作成順ではありません
技能実習のページには「二国間取決め作成順に掲載」と明記されていますが、育成就労のページにその注記はなく、実際の並びは五十音順です。最初に掲載されている国が最初に作成された国とは限りません。
🔍 タイの欄のリンク先にご注意ください
同ページのタイの欄からリンクされているPDFは、2026年9月3日時点でラオスとの覚書の本文になっています(英文・和文とも)。閲覧時には、PDFの冒頭に記載された相手国名をご確認いただくのが確実です。
タイとの覚書の本文は、2026年6月4日付けの報道発表資料「タイ王国との育成就労制度に関する協力覚書について」からリンクされているPDFでご確認いただけます。
監理支援機関が送出機関から取次ぎを受ける形態は、原則として覚書の作成国に限られます。ただし、単独型育成就労と、取引上密接な関係を有する外国の機関の海外事業所の職員を受け入れる形態は、覚書のない国・地域からも認められています。
いいえ。制度ごとに別の覚書を作成する整理です。技能実習の取決めは17か国ありますが、育成就労は2026年9月3日時点で4か国です。
時期は公表されていません。ただし両国は、施行日前申請のページで推薦状の発行対象国とされています。掲載状況は入管庁のページでご確認ください。
外国人育成就労機構(制度の施行までは外国人技能実習機構)のウェブサイトで順次公表されるとされています。育成就労計画の認定申請を行う前に、予定している送出機関がリストに載っているかをご確認ください。
送出国の公的機関が作成するもので、日本側では用意できません。対象者ごとに必要で、申請時に提出します。参考様式第1-6号が用意されています。
育成就労の二国間協力覚書は、2026年9月3日時点でタイ・ウズベキスタン・スリランカ・ラオスの4か国です。監理支援機関を通じた受入れは原則としてこの4か国に限られ、技能実習の17か国とは大きな開きがあります。推薦状の対象5か国とは範囲が異なり、重なるのはラオスだけです。
2027年4月1日の施行までに覚書がどこまで広がるかは、受入れ計画の前提そのものです。入管庁の掲載状況を定期的に確認しながら、覚書・認定送出機関リスト・推薦状の3点をセットで準備を進めることをおすすめします。
「【育成就労 第1回】2027年4月1日までに何が起きる? 受入企業が今すぐ確認する3点」を当事務所の行政書士が解説した動画(9分49秒)です。制度の施行前に収録しているため、今後の政省令・告示で内容が変わる可能性があります。
当事務所では、最新の制度動向を踏まえた上で、外国人ご本人・受入企業様の双方からのご相談を承っています。
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・対象:在留資格の認定・変更・更新の申請です(永住は、宮崎県内にお住まいの方に限ります)。帰化は対象外です。
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・事実と異なる内容の書類だと分かったとき、またはご本人(ご家族を含みます)の申請でないと分かったときは、チェックをお断りします。
本記事は2026年9月時点の公開情報に基づいて執筆しています。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、出入国在留管理庁の公式情報または当事務所までご確認ください。
本記事の執筆者:申請取次行政書士 中山 諭
行政書士法人みやざき国際法務事務所 代表
所在地:宮崎県宮崎市